私達は結婚したのでもう手遅れです!
走馬灯のように雑誌のテーマが頭に浮かんだ。
『女優』『初夏コーデ』『温泉』
これだあああ!

「冬悟さん!お、温泉っていいですよね」

「そうだな」

「やっぱり私、温泉に行きたいなって。初夏の温泉もいいですよねっ」

女優のように私は演じた。

「温泉に行きたいなら行きたいと素直に言えよ。わかった。予約する」

あっさりと私から体を離し、にっこりと冬悟さんは微笑んだ。
それも満足そうに。
あ、あれ。
もしかして、温泉に行きたいと言わされた?

「さて、予約するか」

すごく手際のいい冬悟さん。
まさか、これを狙って!?
相談者A.Tさんに教えてあげたい。
冬悟さんが私にくれるものは断ることのできないプレゼントばかり。
全部、先回りされてしまう。
私の力ではどうにもできない。
A.Tさん……これが本物の重い愛かもしれませんよ……?
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