私達は結婚したのでもう手遅れです!
「あ……あの……私っ……冬悟さんが礼華さんのことを呼び捨てで親しいかんじなのに私には敬語だし、よそよそしいっていうか……」

「呼び捨て?」

「子供っぽいですよね?わかってるんですっ!でも、もっと冬悟さんの身近な存在になりたいんですっ!」

言ってしまった!
これって、嫉妬してましたって言っているようなものだった。

「羽花」

「は、はい……」

熱のこもる声で名前を呼ばれて返事をした。

「羽花と呼びたかった」

そう言うと私の唇をふさいだ。
子供っぽい嫉妬なのに冬悟さんは私のことを嫌にならない?
それがわかってホッとした。
だから―――このまま、唇をふさいでいて。
私がこれ以上、よけいなことを口にしないように。
冬悟さんに『柳屋』に帰りたいということを言わずに黙ってキスを繰り返した―――離れたくなくて。

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