嘘の花言葉
「それが言いたかっただけよ。伝えられて何よりだわ。それじゃあ、さよなら……」

 素っ気なくそう言い、私は想士から背を向けた。

「待ってくれ!」

 後ろからぎゅっと抱きしめられる。そして。

「強がりだけど誰よりも繊細……そんな姫を愛しています、永遠に」

 耳元でそう囁かれた。
 柔らかな匂い。
 懐かしい体温。
 せわしなく鳴り響く心臓。
 やっと聞くことができた、想士の本当の想い。

 私の中の迷いや不安がスッと消え、心が満たされていく。
 別れてから苦しかったわ、ひたすらに逢いたかったの、想士がいない世界で生きる意味を見つけられなかったから。

 彼の腕に優しく触れ、気持ちに応えた。
 桜が散り始める、緩やかに吹く風と共に。
 これからも私たちはきっと、出会いと別れを何度も繰り返す。そして別れが来るたびに悲しみ、出会うたびに歓喜に満ち溢れるだろう。

 連綿と続く時の中で二人で過ごす時間は短くて、桜が舞う様に、ほんの一瞬で。




おわり
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