【書籍化】利害一致婚のはずですが、ホテル王の一途な溺愛に蕩かされています
「失恋を癒やすには、新しい恋が一番。咲笑のことを待ってる運命の男性(ひと)、私はいると思うよ」

「もちろん費用は陵介もちよ?」なんてさらなる朗報を交えてたたみかけてくる。

運命の人なんて大げさすぎ……なんて思いつつも。

ふと、終業間際に見た、トモキと後輩の寄り添う姿が脳裏を過る。ズキっと心が大きく痛んだ。

なによ……。あんなに鼻の下伸ばしちゃって。私にはここしばらくあんな顔見せ無かったくせに……。

私も、好きになった人と幸せになりたいな。次はちゃんと、大切にしてくれる素敵な男性とお付き合いしたい……。

グラグラ揺れていた天秤の針はやがて定まって……

「……ありがとう。なら、行ってみようかな」

シンガポールで新しい恋を探すのも、悪くないように思えた。

行動しなければ何もはじまらないよね。じっとしていても、未来は変わらない。

そう告げるとみゆきは「そうこなくっちゃ」と嬉しそうにグラスを寄せてくる。

――カラン、景気の良い音が、新たな門出を祝福してくれた。


✳✳✳


――そして、一ヶ月後、三月初旬。
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