【書籍化】利害一致婚のはずですが、ホテル王の一途な溺愛に蕩かされています
この夜から、全てがはじまった――。
スイートルームからはシンガポールの夜景が一望できるというのに、ゆっくり眺める暇もなくベッドに押し倒された。上質なマットレスがぽよんと私の体重を受け止める。
「――さえ」
スプリングの上で跳ねる身体を縫い付けるようにして、つい先程魅力的な“利害の一致”婚を提案してきた彼は素早く覆いかぶさってきた。
紳士的だった彼の優美な野獣のような姿。じわりと身体中の熱が下腹部に集まるのがわかる。
「すぐるさん⋯⋯」
「今夜から覚悟してね。俺だけしか見られないようにしてあげるから……」
それを合図に、彼は性急なキスを仕掛けながら、ひとつひとつ衣服を剥がし、情熱的に素肌へ触れていく。
ベットルームに密やかに響く荒ぶるふたりの息遣い。
昨日までの失恋の痛手が嘘のように霧散し、心も身体も甘く溶かされていく。