アクセサリーは 要りません
「うん、お引き止めしてごめんね」

「いや、
引き止めてくれてよかったよ。
木曜日も会えることに
なったからね」

本当に名残惜しいけれど帰るか。ちょっとぎゅっと手に力を入れてから彼女の手を離した。

「オートロック、
中からは外に出れる?」

「はい、ロック解除は外からだけ。
ノブの上のボタン押せば解除です」

「じゃあ、ここで良いよ。
俺が出たら、直ぐに鍵しめて。
その音聞いたら帰るから」

「え?でも見送りは?」

靴を履いて振り返った。そんな顔。初回ぐらい格好つけさせてくれ。

耐えろ、耐えろ、俺。右手で自分の左手首をぐっと掴んだ。
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