バーチャル彼氏
青い空を見上げ、大きく深呼吸をする。


いつもより大人びた、黒いミニのワンピースに身を包んでいる。


少しだけ化粧もして、大学に入っても違和感のないように一応努力したつもり。


本当なら、これから好きな人に会いに行くわけだから、素の自分で勝負したい。


だけど、この飾りたちは私に勇気をくれるんだ。


一歩一歩足を踏み出すごとに、私は向日葵に近づいている。


ドキン、ドキン。


と、心臓は高鳴る。


早く、早く会いたいよ。


いつもゲームでしか会えなかった人。


触れられない、光の中のあなた。


だけど、確かにあなたはそこにいた。


唇の暖かさは、今でもちゃんと思い出せるから。


私は、バッグの中のカンヅメをもう一度確認した。


緑色の『死の合図』は相変わらず輝いていて、それを見ると胸が痛む。
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