バーチャル彼氏
☆☆☆

日曜日の街中はカップルや家族、友達同士なんかでにぎわっていた。


「人多いなぁ」


人ごみを掻き分けながら商店街を歩く。


お姉ちゃんと、今にもはぐれてしまいそうなので服の袖を小さくつまんだ。


「泉ぃ? 気になる喫茶店ってどこよ?」


「ん~、もうちょっと行った所!」


私が目をつけている喫茶店は、商店街を通り過ぎて、人並みが途切れた場所にある。


こっちまで歩いてくる事がないので、今まで気付かなかったが、かなり可愛いお店なのだ。


しっかし……。


こうやってちょっと意識して歩いてみると、バーチャル彼氏を持ち歩いている女性がちょこちょこ目に入る。


女性が缶を手に持ち、その上に男の人が立っているのだから、妙な光景だ。


「本当に人気なんだぁ」


「そうよ? ああやって外に連れ出して色んなものを見せたりして、知識を増やしていくの」


「なぁるほど」


なんだかイケメン育成ゲームって感じだ。


「じゃぁ、向日葵も外に出した方がいいの?」


私が聞くと、「まぁ、外にあるものを記憶させたのであればね?」と、お姉ちゃん。
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