異国の地での濃密一夜。〜スパダリホテル王は身籠り妻への溺愛が止まらない〜
 耳にヘッドホンをつける。もちろん流している曲は吹奏楽だ。ダッタン人の踊りや、海の男たちの歌などオーボエのソロが多い曲のラインナップを流しながら十一時間という長いフライトを機内食を食べたり、少し仮眠を取ったりして自分なりに楽しんだ。ずっと音楽を聞いていたせいか頭の中はオーボエの音色で溢れている。



 いつの間にか寝落ちていたのか重たく閉じた瞼をゆっくりと開けると窓の外には真っ青な空にもくもく浮かぶ雲が目の前に広がっていた。


「わぁ……綺麗……」


 子供の頃は雲が綿飴になって食べてると思っていたが大人になってこうして目の前でみても綿飴のようにふわふわで美味しそうに見えてしまう。私はヘッドホンを外し残しわずかなフライト時間をただひたすら青い空と白い雲を見ながらウィーンへの期待を胸に楽しんだ。
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