純愛不倫の恋
 彼は黙ってしまった。それはそうだ。わたしと結婚できる訳がない。もしも「分かった。結婚しよう」なんて言われたら、わたしは驚きのあまり心臓マヒを起こして死んでしまう。

 不倫相手から熱烈にプロポーズされた瞬間に心臓が止まるなんて女冥利に尽きるかもね、なんて半ば本気で考え、そんなことあり得ないし妄想にも程があると、その馬鹿げた考えを打ち消した。

 彼が次に口を開いたら、“きみだって僕とのセックスを楽しんでいたじゃないか”とか、いかにも自分勝手な男が言いそうなセリフを口にするだろう。わたしの予感は当たるのだ。

「そんなことを言っても、きみだって・・」
「車を止めてください。ここで降ります」

 聞きたくないひどい言葉を最後まで言わせずに、わたしは彼の横顔に微笑みながら、はっきりとした口調で言った。

 声が震えずに言えた。でも、声は震えなくても心は激しく震えていた。
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