クールな社長は政略結婚したウブな妻を包容愛で満たす

 バスルームから出た和優(なゆ)は、ふんわりと肌触りの良いガウン姿のまま
キッチンで炭酸水を少し飲んだ。

結局、パーティー会場でも何も食べていなかったし
今日は外で食べると言っておいたので、家政婦の安子も何も作っていない。

和優は、料理が出来ない訳では無い。かなり、好きな方だ。

病気がちで外で遊べなかった分、家では色々な分野の本を読んで勉強した。

料理もその一つで、家政婦が買ってきた料理本で知識を得てはチャレンジしてみた。
和洋中の気になる料理は全て作ってみた。今では、簡単なお菓子や料理なら、
材料さえあればレシピが無くても作れるほどだ。

『結婚したら、旦那様や子供に作ってあげようって思っていたんだわ…』

だが、今夜は何も作る気になれない。

炭酸水を飲み終えて、ゆっくりグラスを洗う。

汚れた物は、洗えばきれいに(・・・・)なる。

『そうだ…。愛されないなら、この関係をきれいに(・・・・)洗い流せばいい。』

今夜も、柊哉は家に帰って来ないだろう。
都内のどこかに別の家があり、女と暮らしているのかもしれない。

和優の父親とは仕事の関係があるから、きっと縁談を断れなかったのだ。
『HONNMA』が世に出るきっかけになったのは高遠ホテルとの仕事だったから。
父の横やりで、好きな人と結婚できなかったのかもしれない。


『彼を自由にしてあげたい。』

その為に和優に出来る事はひとつ。『離婚』することだけ。




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