クールな社長は政略結婚したウブな妻を包容愛で満たす


 猛暑の夏を過ぎても、まだまだ暑い日が続いた。
おまけに台風がいつになく多い年だ。

9月には、大きな台風が関東直撃コースを進んでいたし、
10月に入っても、また台風の予想進路は関東地方へ向いていた。

「社員達に出勤しないよう伝えておいてよかったなあ。」

吹き降りの雨を見ながら、柊哉が隣に立つ上垣司(かみがきつかさ)に言った。
ビルの窓越しに見ているが、大雨は朝よりかなり激しく降っている。

「電車が止まると厄介ですからね。」

「停電には備えているが、毎年この時期はヒヤヒヤするよ。」

「松濤の家は古いから大丈夫ですか?」
「ああ…。」

「社長も帰った方がいいんじゃない?」

「…大丈夫だ。」

松濤の屋敷に帰っても、和優はいない。
プライベートで付き合いのある司にも、別居の事は告げていなかった。


その時、柊哉のスマホが鳴った。


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