クールな社長は政略結婚したウブな妻を包容愛で満たす
初めて俺を見た和優は、大きく瞳を見開いていた。
自己紹介をすませてからは、俯き加減だった。
さぞ驚いた事だろう。初対面の大男が自分の『結婚相手』と告げられたのだ。
高遠社長は嬉しそうだったが、和優の表情は変わらなかった。
時折顔を上げて、興味深そうに俺を見ていた。
まるで珍しい生き物に遭遇したかのように。
俺だってそうだ。
これまで、こんな上品な女を相手にした事が無い。
何を喋っていいのかもわからなかった。
『よろしくお願いいたします。』
品よくお辞儀をする和優に、自分は何て答えただろうか。
『ああ。』だったか、『おお。』だったか…。
それすら緊張して覚えていなかった。
こっちの気持ちとは裏腹に、トントン拍子に話は進み、
翌年春の、和優の女子大卒業と同時に式を挙げる事になった。
高遠社長は、何故あれ程急いでいたのだろう。
和優が消えて無くなるとでも思っていたのだろうか。
もう一つ気がかりなのは、結婚式の担当になった
社長の遠縁にあたるとかいう里見宏輔の存在だった。
慇懃な態度でホテルマンらしく披露宴の準備に関わっていたが、
時折、射殺しそうな視線を俺に向けて来た。
きっとアイツは和優が好きなんだと、すぐにわかった。
そして、自分こそが和優の結婚相手に選ばれたかったのだろう。