クールな社長は政略結婚したウブな妻を包容愛で満たす
水口家ですっかり話し込んでしまった和優は、時計を見て驚いた。
「長居してしまってごめんなさい。楽しくて話し込んでしまいました。」
「うちは泊ってもらってもいいけど、ご主人が待ってるよね。」
「ええ…。」
夫の話を振られた時だけ、和優が苦しそうな表情をする事に水口夫妻は気がついていた。
涼真が駅前の駐車場に車を取りに行くと言うので、和優も一緒にお暇する事にした。
「じゃあ、親父、お袋、またな。」
「気をつけて帰るんだよ。」
「今日はありがとうございました。」
おっとりと礼をする和優を、水口夫妻は暖かく見守っている。
「また、いつでもおいでよ。」
水口夫妻に見送られて、和優と涼真は館山を後にした。
「何か…気になるねえ…。」
店に入ると、ポツリと妙子が独り言のように呟いた。
「ま、何かあったら力になってやろうな。」
「そうだね…。ちゃんと『辛い』って、言ってくれたらいいねえ…。」
和優と夫の関係に何かあるんだろうと、妙子は女のカンで気付いていた。