クールな社長は政略結婚したウブな妻を包容愛で満たす
ドアはすぐに閉まり、理江だけが廊下に立ったままだ。
ツンと顎を上げて理江が階段の方に歩いてきた。
階下に降りようとすると、踊り場にいた和優と視線がぶつかる。
理江は、ニヤリと笑った。
「見てたの。」
和優は返す言葉が無い。ただ、黙っていた。
「謝らないわよ、私。」
「謝る?」
「だって、柊哉のお母さんに頼まれたんだもの。息子の子供を産んでくれって。」
「お義母さんが?」
「恨むんなら、柊哉を恨むのね。」
「恨むなんて…。」
「ホント、あんたってムカつくわね。」
「理江さん…。」
「お金持ちに生まれて、お綺麗で、柊哉みたいなダンナがいて…
この世にもう欲しいものなんて無いんじゃない?」
「そんな事…。」
「一つくらい、私が貰ってもいいでしょ!」
理江はそのままキッチンへ向かって行った。
お酒でも飲むのだろう。
「この世にもう…欲しいものが無い?私に、欲しいものが…無い?」
理江は誤解している。
和優は、自分は欲しいものがあり過ぎる強欲な人間だと思っていた。
健康も、夫の愛も、子供だって欲しい!