【SR】秘密
気付けば、すっかり酔っ払って呂律の回らない上機嫌な連れ達。


桜もすっかりその肌を染めている。


指名が重なって、忙しそうに狭い店内を行ったり来たりしていた。


無理もない、これだけの容姿を持っている上に良く気が利く。


カジュアルな内装と接客の店内、各テーブルは熱気と共に荒れていく中、桜の客のテーブルには水滴ひとつついていない。


自然にコップの水滴を拭い、煙草の灰は落ちた瞬間拭き取られ、流れる様に近くのボーイへとおしぼりが渡る。


その間、途切れることのない笑顔と会話に驚嘆の息が思わず漏れる。


単純な事かもしれないが、意外とできない事だ。


友人との約束よりも、健気に忙しく働く桜から目が離せない。


他の客の元にいる桜を見て年甲斐もなく軽い嫉妬を覚えた。


類い稀な人を惹きつける魅力。


友人の言葉が頭の中で木霊しているが、目は彼女を追い掛けるのに精一杯だった。


…………この娘は、こんな所にいちゃいけない…………。










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