【SR】秘密
……・……・……・……
上目遣いで俺を見上げるまだあどけなさの残る少女の様な娘。
「ごめんね、酔っ払ってハイになってきちゃったかな。
騒がしいのはキライ?」
白いドレスから覗く陶器の様に滑らかな肌に、花の蕾の様に朱く濡れた唇。
細い首筋は酒のせいかほんのりと桜色に染まっていて、思わず息を飲む。
――いけない。
心の中で自分を殴り飛ばした。
職場の連中に誘われて来た店。
友人にこの店に行くと言ったら、よく観察してきてくれと頼まれたんだっけ。
真剣な声で話す刑事の友人。
まさか、こんな所でこの娘に出会うとは……。
彼女は俺に気付いていないのか。
美しく聡明と噂の少女が何故こんな所で働いているのか。
この異常な熱気の店。
酒が入るから仕方ないにしろ、この盛り上がりはどうだ。
二十代の若い客が多いせいだけではなさそうだが……。
「貴一さん?全然飲まないのね。
もう氷入れすぎで薄まっちゃったわ。
作り直そうか」
桜と名乗る娘の言葉にはっとする。
「あ、あぁ……そのままで良いよ。
上司をタクシーで送って行かなきゃいけないから、酔いを少し醒まさないと」
そ~お?と言いながら水だけを足してくれる。