That's because I love you.
それから、約一時間半後。

(…昨日買ったコンピレーションアルバム、凄い当たりだったんだよなー。)

講義を終えた明広は、珍しく機嫌良さげに大学の廊下を歩いていた。

(…まりあにも聴かせるか。どの曲が気に入るだろ…。)

まりあは明広が教えた音楽ジャンル、洋楽R&BやHIPHOPをいたく気に入ってくれ、曲やアーティストについていつも楽しそうに話してくれるので、明広はすっかり彼女と好きな音楽を共有することの心地よさにハマっていたのだ。
今日、まりあのバイトは確か入っていない。
そして自分の育ての親は出張である。

(…部屋に呼ぶか。そろそろヤりたいと思ってたし、ちょうどいい。)

明広はスマホを開くと、彼女に電話を掛ける。

『…っ…、もしもし…!』

電話に出たまりあは必死に元気を装おうとしている様だったが、明らかに普段より生気が無い声だった。

「…まりあ?何、体調悪いの?」
『ぁ…今日、生理二日目で…。貧血のせいでちょっと目眩が酷くて、家で横になってて…っ。』
「…そっか。ごめん、起こした?」
『いえ…!眠くはないので、ただ横になってただけなんです。』
「…ならよかったけど。」

(…何だ、生理かよ…。)

明広は内心で溜め息を吐く。
彼は生理中の女性に性行為を迫る程、人でなしではなかった。
しかし、生理中の女性を労ることも全くしなかった。
まりあと付き合う以前ならいつも、"あっそ。じゃあまた"と冷たくあしらっていた。

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