That's because I love you.
「昨日買ったCD聴いてくれない?」
「……ふぇ?」
「コンピレーションアルバム買ったんだよ。結構当たりだったからさぁ…、…まりあ?」
「…ふふ~。それじゃ、また私が得しちゃいますよぅ…っ。」

まりあはやたらと嬉しそうな顔で笑っていた。
その意図はわからないものの、明広もついつられて頬が緩んでしまう。

「…何でそんなに嬉しそうにしてるのか知らないけど、かけるよー?」
「はい…っ!…ふぁぁ。前奏からもうすてき~。癒されます~っ。」
「わかる。僕も好き。」
「エイコンさんだぁ~。」
「声だけでよくわかったね。」
「エイコンさん歌上手だし、声も特徴的だから~。」
「確かにね。エイコンが歌うと曲のレベル上がるよな…。」

まりあは明広の期待通り、いやそれ以上に、楽しそうに音楽を語り合ってくれた。
明広は満足気な表情で帰り支度をすると、玄関に向かう。
靴を履くと、見送りに来たまりあの後頭部を片手で引き寄せ、唇を重ねる。

「…じゃあね。早く貧血治すこと。」
「……はい…っ!」
「それだけ顔真っ赤に出来る程血行良かったらすぐ良くなるね。おやすみ。」
「ぁ…明広さん…っ!ほんとにありがとう…!」
「…僕こそありがと。やっぱまりあと聴けてよかった。」
「…!また聴かせてくださいね…っ。」
「うん。」

明広は微笑むと、扉を閉め帰って行った。
彼への想いが募りまくったまりあは思わずその場にしゃがみ込み、両手を唇に持っていきそっと目を瞑る。

(……明広さん…ありがとう。…大好きです…っ…。)

まりあは暫くその場で幸せに浸った後、彼の言い付け通り早く貧血を治すため、またベッドに向かった。






明広は自宅への帰路を歩きながら、心底嬉しそうなまりあの笑顔を思い出していた。

(…全く…懐き過ぎだろ。…行ってよかったな。)

まりあの可愛さに癒され充足感に浸る明広は、"性欲解消"のことなどすっかり忘れているのであった。


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