That's because I love you.
「…明広さん?」
「…………。」

彼女をじっと見つめながら頬を優しく撫で、顔を近付けようとした瞬間ーーーガチャガチャッ、と玄関の鍵が開けられる音が耳に入ってきたので、明広はピタッと動きを止める。
次の瞬間、玄関の扉が勢いよく開き、明るく陽気な声が部屋に響いてきた。

「アキ、たでぇまぁ~ッ!急遽早く帰れることになってさ~…、って…。」

帰宅した途端ギロッと明広に睨まれた髭面の中年の男は、思わず言葉を途切れさせる。
明広の体の向こう側に、もう一人人物が居ることに気付いたのだ。
男は蟹の様に横移動し、明広の体に隠れている人物を確認する。
金髪碧眼の、西洋人形の様な外見の華奢で小さな女の子が、その場でカキーンと固まって立ち尽くしていた。

「…うっわ!!え…!?何処の国のお姫様ですか!?」
「…うるさい。今日も終電で帰るって言ってたじゃん。何でこんな早く帰って来てんの。」
「だから急遽仕事早く終わったって言ってんじゃん!」
「ぁ…あの…っ!初めまして、私…」
「あっ…ハ、ハイ!ス…スミマセンです、うるさくて!」
「何どもりまくってるんだよ…。」
「だってよぉ…!こんな可愛い女の子と話すの初めてだし!」
「まりあ、コイツは育ての親の多田 博都(タダ ヒロト)。急に会わせることになってごめんね。」
「いえ…!私…望月まりあといいます。初めまして、多田さん…っ。」

まりあは突然の展開に緊張し体を硬直させながらも、ぺこっと深くお辞儀をし、多田と目を合わせ微笑んだ。

「…ハイィ…ッ!初めまして、よろしくね…ッ!?」

まりあの可憐な笑顔に、多田は照れまくった挙げ句声を裏返らせてしまう。

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