俺の言うとおりにしてください、お嬢様。




初恋は叶わないって言うし、そもそも最初からエマは誰かさんを好きだから。

無理やりに奪いたかったけど、俺はかなり不器用な性格をしているんだと初めて分かった。


ネックレスを千切って泣かせてビンタを食らって。

そしたら本当に好きになっちゃって、どうしたらいいか分からないヘタレが今だ。



「…俺はお前が羨ましい」


「俺?なんで?」


「無理やりにでも奪える立場にいるからな」



いやだから俺はそれができなかったんだって。

もちろん立場を使えばそんなこと余裕だけど、それでも結局はその上に成り立つ幸せなんか本当の幸せじゃないって分かるし。


だからゼロから恋をして、ひとつずつ育んでいけたらなーって思って今だ。

まぁ政略結婚が生まれたときから決まってた立場からすれば夢みたいに楽しいけど。



「やっぱお前エマのこと好きなんじゃん」


「…誰も嫌いなんて言ってねえだろ」


「じゃあなんでアリサの執事になってんだよ」


「……想定外だったんだよ俺だって。まさかこうなるとは思ってなかった」



不貞腐れたように瞳を落として、床のフローリングをなぞるエリート。

そんな姿に鼻で笑いたい気分だ。



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