俺の言うとおりにしてください、お嬢様。




「エマお嬢様、汗を拭かせていただきますね」



わたしが反応するよりも先に、手にしたタオルで拭ってくれる。

その力加減だって完璧。

そして毎朝セットしてくれる髪も崩さぬようにパーフェクト。



「ハヤセ、わたしドリブルできたよっ!」


「ええ、見ておりました。ただ1つだけアドバイスが許されるなら、
ボールは足のつま先ではなく腹で蹴るとコントロールが上手くできますよ」


「えっ、そうなの!?やってみる!」



……って、お嬢様方のやる気は0だ。

どこにやる気スイッチあるの。

なんかもうお喋り始めちゃってるし、紅茶なんか飲んでピクニックかっての。



「それと小まめに水分補給も取りましょうねお嬢様」


「ううん、まだいい」



いらないっ、と示すと困ったように微笑む専属執事。

それはやっぱり今まで辞めていった執事とはちがう、嫌悪感のないものだ。


むしろそんなわたしを好評価してくれているもので。



「エマお嬢様、このハチミツレモンドリンクは俺の手作りなんです。だから今もお嬢様に飲んで欲しい俺のエゴです」


「なんと!それは飲むよ…!飲むっ!」



< 44 / 340 >

この作品をシェア

pagetop