ブラッド★プリンス〜吸血鬼と女神の秘密〜
「小嶺さんって、話しやすそうね。芦屋笑里だから、わたしのことはエミリって呼んでくれていいよ」

 にこっとあいさつされて、ぽかんと口が開く。思っていた子と、全く違う。

 白川村の伝説は、最初から存在しないことになっていた。

 ルキくんだけでなく、ノエルくんとレイ先輩、それから影楼先生も姿を消した。

 いばらの屋敷へ続く細道はただの草村となって、今はふさがっている。何度試してみても、屋敷へたどり着くことは出来なかった。

 いくつもの朝を迎えて、教室の同じ席へ座る。
 心をくり抜かれたみたいに、ぽっかり穴が空いているけど、不思議と寂しくはない。

 制服のポケットから、お守りを取り出す。きらきらとした糸で石を編み込んだもの。


 ーーこれでいつでも繋がっておれるじゃろう?

 ここには、たしかに彼らと過ごした日々の証が残っているから。

 またいつか、会えるような気がするの。


                 fin.
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