ブラッド★プリンス〜吸血鬼と女神の秘密〜
 学校の駐車場へ着くなり、ルキくんが私の手を引いて歩き出す。ぐいぐいと進んで、あっという間に車のみんなが見えなくなった。

「まっ、待って! 早い、早いよ」

 校舎へ入ったところで、足が止まる。

「……ごめん」

 息が上がっているのに、今気づいたみたい。言いづらそうに、視線を外しながら。

「学校でも、なるべく俺のそばにいて」

 握られたままの手から、熱が込み上げてくる。

 理由は分かっているけど、この状況で言うのは反則だよ。こういうの慣れてないから、ドキドキしちゃうじゃない。

 ルキくんと肩を並べて教室へ入ると、クラスメイトみんなが私たちに注目した。転校して来た時とは、また違う視線。

 ひそひそと話す様子を感じながら、席へ着いた。

 ルキくんと登校したから見られてるのかな? それとも、またよそ者ってやつ?

 最近、芦屋さんたちが大人しくなったと思ったのに。また肩身の狭い思いをしないとならないのかな。

 戸惑いながらノートを出していると、ニヤついた優希ちゃんが話しかけてきた。

「樹里ちゃーん! 見たよ? 黒羽くんと登校なんて、どういうこと? みんな知りたくて仕方ないって顔してるよ」

「えっと、これには複雑な事情があって。私も、よく分かっていないというか……」

「もしかして、この空気感は……昨日お泊まり?」

 女子たちの耳が大きくなっているのに気づいて、あわてて「違う違う!」と否定する。

 普通の声量で、誤解を招くような言い方をしないで!

「泊まり......。別に間違ってはない」
「あーッなたは黙っててっ!」

 シッと目で訴えると、ルキくんはフッと口角を上げて教室を出て行った。

 絶対に面白がっている。さらに場を掻き乱すようなこと、しないでよ。

 女子からの視線が、よりいっそう強まったのは言うまでもない。
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