あやかし戦記 裏側の世界へようこそ
イヅナがお味噌汁のお碗を渡し、母が嬉しそうに入れる。二人で話しているとリビングのドアが開き、イヅナが顔を向けると祖父が起きてきたところだった。

「おじいちゃん、おはよう」

「おはよう、イヅナ」

祖父がニコリと笑い、イヅナも笑い返す。祖父は元教師をしていたため、幼い頃から勉強を教えてもらっており、十五歳になった今でも色々な知識がある祖父に質問することが多い。優しくて賢い祖父のことがイヅナは大好きだ。

「イヅナは今日からキャンプだったかな?」

「うん、そうよ!すごく楽しみなの!」

「どこのキャンプ場に行くんだ?」

「えっと……確か、××キャンプ場だったかな。周りが山に囲まれてるコテージなんだよ」

山、その単語を聞いた刹那に祖父の顔色はどこか真剣なものになる。そして、祖父の骨張った手がイヅナの肩を掴んだ。

「山は妖が住んでおる。気をつけるんだよ、人と妖は共に暮らしているのだから」
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