置き去りにされた花嫁をこの手で幸せに
7月末の石垣島は夏休みの家族連れが溢れんばかり。
直行便で石垣島に向かったが飛行機は満席。機内でもみんなの楽しそうな声がそこかしこから聞こえてきた。

夏休みってこんなに沖縄に来る人が多いのね。
私は暑いからあえて真夏に沖縄は行ったことがなかった。いつも3月や10月など東京都の気温差が心地いい季節にばかり行っていた。
東京も暑いのに、さらに暑い沖縄にこんなに人が溢れているなんて、と驚くが小学生を連れた親子の多さに夏休みの需要の高さを身をもって感じた。

でも、こんなに暑くてはバテてしまわないのかと少し不安になる。
そんな気持ちをスマホにメモした。
少しでも気になったことや気がついたことがあればメモをしておくとあとから参考になることが多いからだ。

レンタカーを借り、ひとまず買ったホテルを見に行くことにした。

石垣島はレンタカーなら数時間で一周回れてしまうくらいの小さな島。
でもそれがいいところかもしれない。
思う存分エリアが絞られた中で遊ぶことができるから移動距離も少なく疲れは最小限になりそう。

それにしてもなんて青い空なんだろう。
空ってこんなに広かったのかな。
そもそも最近空なんて見上げてもいなかったな。
海岸沿いに出ると吸い込まれそうな青い海。
どこもかしこも青だらけ。
車の窓を少し開けると潮の匂いがしてきた。

この景色を見て「沖縄最高!」と叫びたい衝動に駆られた。
開放感溢れるこの高揚感はなんとも言えない。
東京から来たから余計にテンションが上がるのだろう。

日本に居ながらの別世界のようにさえ感じる。

しばらく海を見続けながら風を感じていると加賀美くんが話しかけてきた。

「ホテルまで行くとお昼食べ損ねるからこの辺で食べないか?ソーキそばでいい?」

「ソーキそば!いいよ。沖縄に来たって感じじゃない?」

「まあそうだな。っていうか槇村テンション高くなってる?」

「うん。なんだか青い空に青い海って開放感あるよね。どこまでも見渡せて東京とは違うね」

「そうだな。日常から離れたって強く感じるな」

私は何度も頷いた。
この景色は沖縄に来た醍醐味だよね。

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