置き去りにされた花嫁をこの手で幸せに

揺れる

私たちは遅くなったがやっと打ち合わせを始めた。
午前中加賀美くんも先週のことをまとめていたようだ。
私たちの考えや感覚のすり合わせを行い明日のミーティングに備えてた。

今日はこれで終わりにして少し早めだが加賀美くんに帰宅を促された。

駅まで一緒に歩くがさっき言われたことが頭から離れない。

今までと同じではいられずうまく会話ができない。

そうこうしている間に駅着いてしまった。

「今日はありがとう。それじゃ、また明日ね」

「お疲れ様」

それだけ言うと改札で分かれた。

とても疲れた1日だった。

こんなに早く悠介に会うなんて思わなかった。油断してた。
しかも今さら謝ろうとするなんて信じられなかった。
あの日からもう1ヶ月以上経ってる。
その間いくらでも連絡はできたはず。
それをしないで普通に出勤し続けていた。
その無神経な性格を今さらながら知れて良かったけどたまたま会ったからって一言謝ろうだなんて虫のいい話はない。
悠介には他に相手がいるんだよね。
どの顔下げて私と会うんだろうと思ったけどあんな普通の顔だった。
悪いと思っているのか分からない、ただ謝ろうという姿だけだった。心から悪いとは思っていないのかもしれない。
慰謝料払うんだから終わりと思っているのかもしれない。
もしそうなら本当に無神経なことだ。

私がどれだけ傷つけられたのかわからないんだろうなと改めて悠介という人が理解できなくなった。
悠介を見てきた2年半、私は何を見てたんだろうな。
私はもう自分の人を見る目のなさをつくづく実感し情けなくなり笑いが込み上げてきた。

やっぱりもう恋愛なんていいや。
あんな人を選ぶ自分のことも信じられないもの。
夜空を見上げ、目元に溜まった涙がこぼれ落ちないように歯を食いしばった。

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