妄想ファンタスティック
雨傘クルリ
突然の雨に降られて雨宿りをしていると真っ赤な雨傘をさした“あいつ”が目の前を通り過ぎた。前を真っ直ぐ見据えてこちらに見向きもせずに。
5分後、雨はまだ止まず立ちすくんでいるとまたアイツが目の前を横切った。ちょうど目の前に来た途端、クルッと傘を一回転させて水しぶきを飛び散らせた。むろんこちらはただでさえ濡れているのに更にびしょ濡れ。それでも見向きもせずに通り過ぎようとしたのでさすがにオイッ、と声を掛けようした、その時
「入る?」
とニヤッと笑いながら振り返った。
「その代わりあなたが傘さしてね」。
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