嘘は溺愛のはじまり
「そう言えば高校の時さぁ。若月の進路がK大学って聞いた奴ら、みんなK大目指してたの、知ってる?」
「え? そう、なの?」
「身の程知らずだよな」
「そんなことはないと思うけど……」
「で、必死になってなんとか合格を勝ち取れた奴らも、いざ入ってみたら、当の若月はいなかった、ってオチ」
「……ごめん」
「俺もびっくりした。後になって橋本たちから、密かに女子大に変更してたんだって聞いた」
奥瀬くんは、そこで口を噤んだ。
きっと、あの頃の私の噂話を思い出していて、さすがにそれを言葉にするははばかられたのだろう。
「あの、それは、女子大の方が、学びたい学部があったから……」
ほとんど嘘に近い言葉をたどたどしく返すと奥瀬くんの表情が曇って、私の心はまたざわつき始める。
私のいま言った言葉は、きっと信じられていないのだろうと思う。
それでも、何度も嘘を上塗りすることでしか、私は自分自身を保てない。
少しはマシになったかと思ったけど、まだまだ私は弱いままだと心の中で落胆する。
「まぁ、K大に行かなくて正解だったかもな。女子大への選択をしたから、今の若月があるんだし」
「……そうだと良いけど」
奥瀬くんはジョッキに残っていたビールを飲み干して、通りかかった店員に「ビールもう一杯お願いします」と声を掛けた。
私は久しぶりのアルコールで、やっぱりちょっと酔い始めている。