何も言わないで。ぎゅっと抱きしめて。



「……隼也、ごめんね」



食べ終わって食器を下げてから、ボーッとテレビを眺めていた。


そんな時にぽつりと呟いた言葉に、隼也は



「……それは、何に対してのごめん?」



と同じくテレビに視線を向けたまま聞く。



「……何も言わずにいなくなってごめん。三年も連絡が取れなくてごめん。何事もなかったかのようにまた現れてごめん。子どものことも……全部事後報告でごめん。……隼也に謝らないといけないこと、まだまだいっぱいある」



隣を向いて頭を下げる。


本当はもっと早く、こうやって謝るべきだった。三年前に、謝るべきだった。


隼也は今どんな気持ちなのだろう、その何故か痛々しい表情からは何も感情が読み取れなかった。



「なんで勝手に行ったんだよ。なんで連絡つかなくなったんだよ。なんっで……他の男と子ども作ってんだよっ……」



その言葉に、目を見開く。



"他の男と"



その言い方じゃまるで、隼也がその顔も知らない相手に嫉妬してるみたいで。


……馬鹿だな、私。そんなわけないのに。


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