猫目先輩の甘い眼差し


毛でいっぱいになったテープを剥がし、再び転がす。


抜け毛が多い長毛の犬だったようで、なかなか量が減らない。

換毛期の大変さを経験している私でも、これは一苦労だ。



「前行ったところでもこんな感じだったんですか?」

「うん。毛まみれにはならなかったけど、けっこう顔舐められたかな」



次が授業体験ということで、これまでに行った学校でのモテエピソードを聞いてみた。

大学と専門学校、どちらも先程のように懐かれたらしく、先生や生徒さんから驚かれたのだそう。



「すごいですね……。昔からなんですか?」

「みたい。家族には『動物磁石』、クラスメイトには『動物たらし』って言われてたから」



た、たらし⁉
人たらしはよく聞くけど、動物たらしは初めて聞いた……。



「そこまで言われるくらい、懐かれてたんですね」

「うん。だからか、学校ではずっとあだ名で呼ばれた。あまり名前で呼ばれたこと、なかったかも」

「えっ」



クリーナーを転がす手が止まった。

ってことは、零士くんじゃなくて、たらしくんって呼ばれてたの……?
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