猫目先輩の甘い眼差し

少し強く言い放つと、眉尻を下げて謝ってきた。


車が多い時間帯なのもあって、本当はもう少しきつく注意するつもりだったけど……。

汗だくになるまで捜してたみたいだったからグッと抑えた。


帰宅し、自分の部屋に荷物を置いてリビングのドアを開ける。

すると、1匹のキジトラ猫が足元にすり寄ってきた。



「ただいま。遅くなってごめんね」



その場にしゃがんで顎の下を撫でる。

この子も愛猫で、名前はトラ吉。
ベルと同じく春生まれで、もうすぐ1歳を迎える男の子。



「ただいま〜」



トラ吉と遊んでいたら父も帰宅。

声に気づいたベルが、おかえりと言わんばかりに父の元へ駆け寄っていった。



「おっ、今日はカレー?」

「残念。ビーフシチューでした」

「ありゃ、外れたか」



トラ吉を抱えてソファーに座り、仲睦まじいやり取りをする両親を眺める。


動物大好きなお父さんと、料理上手なお母さん。

そんな仲良し夫婦の間に生まれたのが、一人娘である私、市瀬 世蘭。

可愛い愛猫達と暮らしている、今年で17歳になる女子高生だ。
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