猫目先輩の甘い眼差し


隣から消え入りそうな声が聞こえて、チクッと心が痛む。

彼女が言うには、水よりも栄養があると思って選んだのだそう。



「そうだね。人間用の牛乳は、猫にとって刺激が強いんだよ。特に子猫は」

「そうなんですか……」



私だって、汚い水を飲んでいたら綺麗な物と交換してあげたいし、少しでも栄養がある物を飲ませてあげたい。


悪気があったわけじゃない。知識が少し足りなかっただけ。

底にある気持ちは一緒だったのに……。



「きつい言い方しちゃってごめんね。私も昔、同じ失敗したことがあったから……」

「そんな! 先輩は悪くないです! 教えてくださってありがとうございました」



謝罪したものの、逆にお礼を言われてしまった。

普通なら、感謝されたら嬉しい気持ちになるはず。

だけど。



「最後にもう1つ。もしご飯をあげるなら、ご近所さんと話し合ってね。苦情が来るかもしれないから」

「わかりました!」



声を荒らげない、丁寧で落ち着きのある指導とフォロー。

この時ばかりは、己の心の狭さと余裕のなさを感じて嫌気が差した。
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