西岡三兄弟の異常な執着~After Story~
その日の夜からの秀実への扱いは酷いなんてものじゃなかった。

ほぼ毎日深夜に、三兄弟に呼びつけられ大したことのない用事を言いつけられるのだ。
二階リビングで団欒中の四人。

基本的に四人の就寝時間は午前0時。
そして水樹達の勤務はだいたい午前6時~午後9時まで。
なのでその後の三時間は、いつも森宮と秀実の二人で対応している。
しかし黄河の命令で森宮は、午後9時以降は緊急以外は一切関与しないという誓約をしている。
秀実にとって、21時からは“地獄”だ。

「花苗、何見てるの?」
「ん?このシュークリーム美味しそうだなぁって!」
「じゃあ…明日でも買って来させようよ!」
「うーん、いいよ。皆さん忙しいし……
だからって、私は外出ちゃダメなんでしょ?」

「「「ダメ!!」」」
三兄弟がハモる。
「それにこれ、開店前から並ばないと買えないみたいだし。だから諦める!」

「秀実に今から並ばせろよ!」
「え……」
「そうだね!」
そう言って朱雀は、スマホを取り出し秀実に電話をかけた。
「や、やめて!朱雀!やっぱりいらないから!」

「苗!!」
「え……真白くん?」
「また気を遣ってるぅ!」
「気なんか遣ってないよ!ほんとだよ!」

「花苗」
「え…黄河さん…?」
「や、く、そ、く!忘れた?」

【花苗、約束して?
秀実に気を遣わない、情けをかけない、助けない。
僕の言うこと聞いてくれるんだよね?
だったら、約束できるよね?】

「………はい…」
「━━━━てことで、買ってきてよ!」
朱雀が通話を切る。
「花苗、明日楽しみにしててね!」
「うん…」

次の日秀実は、朝起きることができずシュークリームを買うことができなかった。
「申し訳ありません!」
「いえ、大丈夫ですよ!こちらこそ、朝早くからごめんなさい!」
花苗も頭を下げる。

「それよりも秀実さん、体調悪いんじゃ……」
「大丈夫です!!」
「あ、そ、そうですよね…」
そう言って花苗は、リビングを出ていったのだった。

「━━━━様!花苗様!」
「……へ!?ご、ごめんなさい!ボーッとしてました」
「どうされたんですか?」
庭師の土肥が、心配そうに話しかける。

「秀実さんの為に何か、力になれないかなって……」
花苗は秀実の力になれないか、必死に考えていた。

「…………そんな必要ないかと…」
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