西岡三兄弟の異常な執着~After Story~
ゆっくり完食した黄河。

「花苗、ありがとう。
旨かったよ!」
「良かった!じゃあ…また横になっててね。
片付けてくるね」
「待ってくれ!」
花苗の手を掴む、黄河。

「ん?黄河さん?」
「不安…なんだ……」
「黄…河…さん…?」
「横になったら、もう…戻れない気がして…」
花苗はベット脇に座り、黄河の手を両手で包み込んだ。
「黄河さん、おば様はそんな簡単に黄河さんを連れて行かないよ!大丈夫。私達がいるよ!
大丈夫だから、ゆっくり休んで?
朱雀と真白くんが帰って来たら、ちゃんと起こすから!ね?」

黄河が睡眠時間を三時間程しか取れないのは、理由がある。
黄河達三兄弟の両親が亡くなった日。
父親は即死だったが、母親はそれから意識不明状態でそのまま起きることなく亡くなった。
その時の眠っている母親の姿が、黄河の頭の中にずっとこびりつき、トラウマになっているのだ。

だから黄河は、眠っているとそのまま死ぬのではないかと考えてしまうのだ。

あの時の、母親のように━━━━━━━

「ほら、横になって!もう少し休も?」
「あぁ…わかった…」
「大丈夫。ずっと傍にいるから!」
再び黄河は、眠りについた。

黄河の寝息を確認して、花苗は庭に出た。
花を摘んで、黄河の部屋に飾ろうと思ったからだ。

土肥と花を選んでいると━━━━
「花苗!!!」
「え……?
黄河さ━━━━」
黄河が走ってきて、あっという間に抱き締められた。

「なんで、傍にいない!?
………俺を…一人にするな……」
初めての黄河の切ない声。
消えそうな呟き。

花苗はゆっくり、黄河を抱き締め返した。
「ごめんね…黄河さんの部屋にお花を飾ろうと思って……」
「あぁ…」
腕を緩めて、花苗の顔を覗き込んだ黄河。

「部屋に戻るぞ“一緒に”」
「うん」

黄河の部屋に戻った二人。
黄河は、ソファに座った。
「黄河さん、寝ないの?」
「もう、寝ない。その隙に花苗がいなくなるかもだからな」
「ごめんね…」
「それに、もうほんとに身体が楽になった。
だから、大丈夫だ!ありがとな、花苗」
黄河が微笑んだ。
< 54 / 73 >

この作品をシェア

pagetop