西岡三兄弟の異常な執着~After Story~
真逆
屋敷に帰りついた三兄弟と花苗。
その数十分後、秀実が引っ越してきた。

「改めて、よろしくお願いします。
秀実さん、向かって左から水樹さん、塩見さん、斎藤さん、野沢さんです。
皆さん、昨日お話したように秀実さんです。
仕事内容を教えてあげてください」
「はい、かしこまりました」
水樹が答える。

「あの、荷物はどうしたら……」
「あ、秀実さんのお部屋は僕の隣です。
水樹さん、案内してもらえますか?」
「はい。
秀実さん、こちらへ」
「他の皆さんは、お仕事に戻ってください」
「はい」
みんなそれぞれ、作業に取りかかったのだった。

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「こちらが、秀実さんのお部屋です」
「ありがとうございます」
「今日は私についてください。仕事の内容を一通り教えます。
動きやすい格好に着替えてください。
私はここで、待ってますので」
秀実が中に入ろうとして、一度振り返った。

「秀実さん?どうされました?」
「助けてください!私……」
「え……?秀実さ━━━━━」

「何をやってるんですか!?
秀実さん、ご主人様達がお仕事に出るそうです。
お見送りをしないと!」
「え?あ、はい」
秀実と水樹はそのまま、森宮と共に玄関に向かったのだった。

「ごめんね、花苗。
なるべく急いで帰ってくるからね!」
花苗の頭を撫で、微笑み言った朱雀。
「花苗、行ってくる」
黄河もポンポンと花苗の頭を撫でた。
「苗~、今日は映画でも見よ?兄ちゃん達と」
元気のない花苗の顔を覗き込んで、微笑み言った真白。

そんな三人の姿を、秀実は心底驚愕し見ていた。
自分には、あんなに残酷な三兄弟。
花苗に対しては正反対。
羨ましさと通り越して、憎くすらある。

三人の表情を見るだけでわかる。
愛しくて堪らない。
このまま、放れたくない。
そんな、表情……

「行ってらっしゃい」
花苗も小さく手を振り、微笑んだのだった。

ガチャンと扉が閉まると、花苗はゆっくり手を下ろした。
「私…部屋に行きますね」
そう言って、部屋に向かったのだった。

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「花苗さんは、羨ましいなぁ」
「え?」
「三兄弟にあんなに愛されて……」

水樹に仕事を一通り教えてもらっている秀実。
ボソッと呟いた。

「そうでしょうか?」
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