日溜まりの憂鬱
「素敵なお店。野田さんって本当に色んなお店知ってるんだね」

「食べ歩きくらいしか趣味がないからね。趣味くらいは充実させないと日々仕事漬けだし」

「仕事も趣味も充実してるんだね」

「まあ、そうだね。楽しむためには仕事しなきゃだし、仕事するからには自分へのご褒美が必要だし。仕事も趣味もうまいこと回してる感じかな」

 昔から変わらない野田さんの言葉。彼女は何も変わっていない。食べること、飲むこと。それが趣味の野田さんは醜くはない程度にふっくらとした体形の持ち主だ。体形も生き方も、纏っている空気までも変わっていない。

 野田さんから見た菜穂もそれは同じなのだろう。テーブルに頬杖をついた野田さんが目を細めた。

「菜穂ちゃん、全然変わんないね」

「そうかな。野田さんも変わってないよ。相変わらずキラキラしてるし」

 キラキラ? 大袈裟に瞬きを見せた野田さんは「ギラギラじゃなくて?」と素早く切り返す。そこもまた変わっていない点だった。それに対して話を膨らませられない不変の自分に虚しくなる。
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