婚前契約書により、今日から私たちは愛し合う~溺愛圏外のはずが、冷徹御曹司は独占欲を止められない~

もしも奈子が家にいなければ、宗一郎はついに冷静でいられなくなる。

腕の中に閉じ込めるまでは不安を消せない。
奈子を失うのが怖い。

宗一郎はじっとしているのが嫌で、また奈子に電話をかけたけれど、ずっと電源を落とされたままだった。
そわそわして落ち着かなくなってくる。

「奈子さんがご自宅にいらっしゃらなかったら、私が見つかるまで探します」

佐竹が低くささやいて車を急がせる。

窓の外をのろのろと夜の街が過ぎ去り、赤信号で止まるたびに宗一郎は癇癪を起こしそうになった。

ホーズキ自動車のセダンをこれほど遅いと思ったことはない。
宗一郎が走ったほうが速いような気さえしてくる。

なんとかおとなしくシートに背中を押しつけ、ついにそれ以上耐えきれなくなったとき、フロントガラスの向こうにようやくふたりの家が見えた。

宗一郎はパッと体を起こす。

佐竹がブレーキを踏み始めた途端、勝手にロックを解除し、ドアを蹴破るようにして押し開けた。
まだ完全に止まりきらないうちから、身も軽く車を降りる。

細く照らされたアプローチをたどりながら、宗一郎は家を見上げて気配を探った。

どの部屋にも明かりがない。
午後十一時とはいえ、あまりに静かだった。

鍵を開けて玄関のドアを引く。
暗闇の中、隅のほうに奈子のバッグとパンプスが転がっているのがわかった。

佐竹が追ってくるはずなので、宗一郎は施錠せず、電気もつけないまま、廊下を勢いよく走っていく。
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