婚前契約書により、今日から私たちは愛し合う~溺愛圏外のはずが、冷徹御曹司は独占欲を止められない~
リビングの中央にある大きなソファに奈子を座らせ、すぐ目の前にひざまずいている。
両手で奈子の肘を掴み、逃がさないように腕の中に囲っていた。
深刻そうに眉を寄せ、真っすぐに奈子を見上げる。
「宗一郎さん」
奈子はきょとんとしてまばたきをした。
ふと顔を上げ、部屋の入り口に佐竹が立っていることに気づく。
(どうしてふたりがうちにいるの?)
それで杉咲のことを思い出した。
突然ひどい息苦しさが戻ってきて、奈子は慌てて宗一郎の手を振り払う。
「放して!」
宗一郎の目の奥がかすかに揺れる。
まるで奈子が傷つけたみたいだった。
でも宗一郎がそんなことで悲しむはずがない。
急に立ち上がったせいで目が回って、奈子は吐きそうになるのをこらえた。
「奈子」
ふらついた奈子を宗一郎が捕まえる。
奈子は目眩が治まるのを待ってから、宗一郎の胸をそっと押し返した。
うつむいたまま小さくささやく。
「こんなところにいていいんですか、お仕事は? 今、大変ですよね」
宗一郎は質問に答えなかった。
背中をかがめ、奈子を覗き込むようにして見つめる。