堅物な和菓子王子は一途に愛を貫く

午後からは、手つかずにしていた仕事に取り掛かる。美鈴さんが猛烈に頑張ってくれたみたいで、彩芽の仕事はかなり減っていた。

「百合ちゃんは?」

見まわすと、百合ちゃんがいない。

「勉強のためって言うことで、会議に出てもらってる。話を聞くだけだし、大丈夫でしょ。それにしても、なんとかしないといけないわね」
美鈴さんが、うーんと唸った。

「私が話をしてみようか」

「もう少しだけ時間をください。ちょっと考えてみます…」

彩芽も新人の頃は失敗をした。先輩たちは、そうした彩芽を我慢して育ててくれたのだ。

確かに百合ちゃんは、とんでもないことをしでかすけど、同じように我慢して育てていかなければいけない。

「大変だけど、後輩を育てることで彩芽ちゃんも成長できると思うの。がんばってみて。相談はいくらでも乗るから」

「ありがとうございます」
美鈴さんの励ましに感謝した。

今日も残業が確定し、みんなが帰ったあと一人で作業をする。それでも8時には会社を出ることができた。大騒動があった割には早い方だ。

一週間が始まったばかりなのに、この疲労感。

最近は、こんなとき、タロちゃんのことを考えると少し気持ちが上がったのだが、土曜日のことを考えると逆に沈む。

ぼんやりとしながら、駅に向かった。

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