今日から騎士団長の愛娘!?~虐げられていた悪役幼女ですが、最強パパはわたしにメロメロです~
 一方で、三十二年間共に過ごしてきた乳兄弟のバイアスにあっけらかんと告げられて、ものすごく今さら感を覚えた。
 そういう大事なことは、リリーとの同居が決まってすぐに言えばいいだろうに……!
「そういうことはもっと早く言わんか!」
 俺が眉間を指で伸ばしながら声を大きくすれば、バイアスはジトリと俺を見返して唇を尖らせる。
「せっかくアドバイスしたのにその態度はどうかと思うッス。それに三十二年物の眉間の皺は、今じゃすっかり団長の標準装備ッスからね。そもそも今さら皺が取れるか……って、わぁあっ!! あぶなっ!?」
 すんでのところでシュイッと体をくねらせ、俺の拳を躱したバイアスが不満を滲ませる。
「なに、しれっと人の腹に拳をめり込まそうとしてるんスか!? 暴力は反対ッス! 暴力は!」
「おっとすまんな。お前の腹にハエが止まっていてな」
「ハエなんかいるわけないッスから! って、俺の話ちゃんと聞いてるッスか!?」
 普段飄々としたバイアスが息巻く姿を見て、ほんの少し溜飲が下がった俺は、やかましいバイアスを無視して今日の業務に取りかかった。業務中どんなに憤まん遣る方無い案件にぶち当たっても、意識して眉間を平らに保つように心がけて。
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