真夜中に恋の舞う
「待たせてごめんね。帰ろうか」
自分の作業がひと段落したらしい。私は慌てて荷物をまとめて、席を立つ。
「じゃあ、お疲れ様」
きらきらの王子様スマイルで生徒会メンバーに挨拶をする犀川くん。私も続いて「お疲れ様です」と頭を下げる。
「お疲れ様、犀川くん」
浅木さんから、わざわざ宛先指定の挨拶が返ってきた。
文化祭の準備でいつになく賑やかな生徒会室を後にして、吹奏楽部の演奏がまだ聞こえる廊下を、犀川くんと歩く。
「ごめんね、遅くなって」
「……うん」
そう思ってるなら、浅木さんとの仲を見せつけてないで、早く帰らせてくれればよかったのに。なんて、意地悪なことを思ってしまう。
「なに、怒ってる?」
犀川くんは振り返って、不機嫌な私の顔を見てにやりと口角を上げた。
「怒って、ないけど」
「もしかしてヤキモチ妬いてる?」
怒ってないって言っているのに、犀川くんは楽しそうに、勝手に話を進める。