真夜中に恋の舞う
「違うし」
「絶対そうだし」
私の口調を真似して、意地悪な笑顔で、私を壁際に追い詰める。
私はじわりじわりと後ずさっているうちに、背中にトンと壁が当たった。まずい、逃げ場がない。
近づいてくる、犀川くんの綺麗な顔。犀川くんの金色の髪が私のおでこに当たって、くすぐったい。
唇が、触れてしまいそうになった、とき。
「犀川くん!」
突然聞こえた声に、犀川くんよりも私のほうが100倍くらい驚いて、飛ぶように犀川くんから距離を取った。
私は学校で一体何を……!?
声をかけてきたのは、浅木さんだった。犀川くんは少しも動じていない顔をして、にっこりといつもの王子様スマイルを浮かべる。
「浅木さん、何かあった?」
浅木さんも、私の存在なんて見えていないかのように、落ち着いた笑顔を向ける。
「これ、忘れてたよ」
浅木先輩が差し出したのは、犀川くんのスマホ。
「本当だ、ありがとう。助かったよ」
犀川くんはにこやかにスマホを受け取り、浅木先輩もにこやかに「じゃあ、また明日ね」と別れの挨拶をする。
私はできるだけ気配を消しながら、2人の会話が終わるのを待った。