真夜中に恋の舞う



「え、尋くん!?」

「家まで送るから、乗りな」



そう言ってドアが開く黒い車。恐る恐る助手席に乗り込む。




「なんで……」


「深雪に頼まれて」




深雪って、犀川くんが?


確かに尋くんは、あの日コンビニで犀川くんと一緒にいたから、2人は知り合いなのだろう。

深雪って名前で呼ぶってことは、かなり親しい間柄なのかもしれない。



昔よく遊んでもらっていた尋くんと、犀川くんが知り合いだなんて、何だか変な感じだなと思う。





「生徒会忙しいんだってね。深雪が生徒会長とか笑っちゃうよ。相変わらず外面がいいみたいで」




可笑しそうに笑っている尋くん。



「あ、シートベルト締めてね」



そう言って、尋くんがぐっと私に近づく。びっくりして目を丸くしていると、私の右肩にあるシートベルトを取って、尋くんが装着してくれた。






「あ……ありがとう」




びっくりした、近くてドキドキしてしまった。


尋くんの車が発進して、私は家まで車で送ってもらうことになった。




少し長めの、黒い紙。黒縁の眼鏡に、左目の下に泣き黒子のある、たれ目の瞳。いつのまにか耳には、いくつもシルバーのピアスがついていた。



眉を下げて笑う優しい表情はあの頃のままに、私の知らない、大人な男性になっていた。




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