真夜中に恋の舞う
   





「犀川くんとは文化祭一緒に回らないの?」



そして、文化祭当日。

屋台でチュロスを紙コップに入れる係をしているはるちゃんが、会計をしている私に聞く。



「え……そんなこと考えてなかった。確かに、そういうこともあるのか」



目からウロコな私に、はるちゃんが呆れた顔をする。


「そんな感じだと、浅木先輩に取られちゃうよ。ほら、噂をすれば」




はるちゃんが指さす先には、生徒会の腕章を付けて歩いてくる犀川くんと浅木さん。

遠くから見ても目立つ2人に、今にも腕が触れそうなくらい近い距離に、胸がきゅっと締め付けられる。




「あ、萌乃ちゃん」





少し離れたところから犀川くんが気付いて、王子様スマイルのまま私たちの屋台に向かってくる。

クラスメイトの女の子たちがきゃー、と黄色い声を上げる。




「久しぶりだね」



誰のせいで久しぶりだと思ってるの?と思ったけど、小心者なので口には出せない。

しかも犀川くんは王子様モードだ。



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