真夜中に恋の舞う
「お久しぶりです」
つられるように、にっこりと笑顔作る。
「何で敬語なの?」
くく、と笑う犀川くんの笑顔が、王子様スマイルじゃなくて自然な笑顔に見えたから、思わずときめいてしまう。ずるい。
「犀川くん、早く次行かないと」
「ああ、そっか。じゃあ、またね萌乃ちゃん」
犀川くんはさっさと浅木さんに連れられてどこかへ行ってしまった。
犀川くんが行ってしまって寂しい反面、一瞬だけでも話せたことが嬉しいなんて、単純だ。
「それでは今年のミスコン1位は浅木美和さん、ミスターコン1位は過去最多得票で犀川深雪くんでーす!」
校庭のイベントステージの、司会者の声がスピーカーで屋台まで聞こえてくる。
そうか、もうミスコン発表の時間なのかと、時計を見て思う。
はるちゃんが「見に行こうよ!」と言うので、一緒に校庭に向かった。
ミス・ミスターコンは学祭のメインイベントなので、多くの学生がステージを見に集まっている。
そんなみんなの視線を浴びながら、犀川くんと浅木さんがステージの上で、トロフィーみたいなものを渡されている。
こうやって並ぶと、犀川くんの金髪と浅木さんの黒髪が対照的で、でも整った容姿は共通していて、なんだか少女漫画のヒーローとヒロインみたいだなと思った。