ままになったら極上御曹司に捕まりました?!
深緑の着物に映える白い肌、着物からちらりと見えるうなじ。

そして微かに彼女が纏う優しくて甘い香り。

俺の記憶の中にいる彼女と全く同じだった。

その後のことはほとんど無意識だった。

気づいた時には4年前と同じように彼女を抱きしめていた。

「お、お客様、どうなさいましたか」

もう、自分の欲望に抗うことは出来なかった。
俺は客じゃなんかじゃない。

彼女にとっての特別にまたなりたかった。

「お客様じゃない、あの時みたいに亮真って呼んでよ」

「お、お客様……」

困り果てた様子の彼女。でも俺は構わず続ける。

「やっと見つけたんだ。二度と離さない」

どれだけ俺が探したと思ってるんだ。

それに、もうここまで来たらやけくそだった。

後戻りはできない。

「あの…何かの人違いです、離してください」

俺が勘違いなんてするわけないだろ?

昼間は俺がそう言ったけど、耳を貸すつもりは無い。

無理やり彼女を後ろに向かせる。

「さくら、ちゃんと目を見て言って」

彼女の耳元で囁く。

耳が弱いことは把握済みだ。

「ひ、人違いですので腕を離してください…」

「さくら、」

「ひ、人違いで…………」

顔を上げ、目が合った彼女の顔は赤く、目が潤んでいた。

そうしているのは俺だとわかっていながらも、この姿を他の知らない誰かに見られたかもしれないと思うと嫉妬で狂いそうになる。

聞きたいほどは山ほどあるのに、彼女は身をよじって手を振りほどこうとする。

「さくら、どうしてそんなこと言うんだ…。俺は…あの日からずっと……」

彼女に想い焦がれながら必死に仕事をこなしてきた。

何か訳があったんだと、この4年間そう信じて過ごしてきた。

「私はさくらで間違いないですが、お客様の仰る方とは違う人ですので腕を離してください」

彼女の温もりが腕の中から消える。

「さくらっ……もう1回機会をくれ…」

もう離したくなかった、離れたくなかった。

そんな思いとは裏腹に、彼女の姿は遠くなる。

俺たちはどこで間違ったんだろうか。

もう元には戻れないのか…。
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