ままになったら極上御曹司に捕まりました?!
彼女を幸せにするのは自分だけだと信じていたから。
公園で目にした時は、幻かと思ったが、2度目は違かった。
紛れもなくずっと会いたいと願った彼女だった。
まさか、実家の旅館で働いているとは思いもよらなかった。
ずっと違うところに引っ越して新しい仕事をしているのだとばかり考えていた。
でも、彼女のピンと伸びた姿勢や、綺麗な所作、心遣いは、旅館で過ごしてきたからこその賜物なのだと痛感した。
この旅館で働いているということは、旦那は婿に入ったのだろうか。
ここを継ぐために仕事を辞めたのかもしれない。
落ち着いて考えたら、家庭のある女性を抱きしめるのはもはや犯罪の域だろう。
さっきは気が動転して、思わず引き止めてしまった。
…だとしても、彼女が家庭を持っていることは少なからずショックだ。
もう二度と彼女を手に入れられないんだと思うとやりきれない。
きっとこのまま一生独身を貫くんだろうな、俺は。
さくらに恋をしてから、昔から付属品かのように付いていた婚約者というオプションは解消した。
元婚約者の佑香にも想い人がいて、互いに応援し合おう、ということになった。
だが、互いの両親にもきちんと納得をして貰えるように説明をしよう、と計画を練っている時に突然俺の海外出張が決定してしまった。
直接両親と話して説得させるのももちろん必要だけど、それよりも先に業績さえあげてしまえば文句のつけ所も無くなるだろうと思い、両親への詳しい話は帰国の際に話そうとしていた。
俺の結婚する相手は、さくらしか考えられないし、お互いに気持ちは通じあっていたはずだった。
もちろんプロポーズも受け入れてくれると思っていた。
…が、さくらは同じ気持ちではなかったみたいだ。
婚約指輪は受け取って貰えず、ましてや別れを切り出されそのまま音信不通となったのだ。
多分あの時の俺は人生で1番のどん底にいた。
…まぁ未だに状況は変わってないけど。
深くため息をつき、用意された布団に入る。