桜の花びらが降る頃、きみに恋をする
それから、2時間目にあった音楽の授業が終わり、音楽室から教室へと美菜と一緒に向かっている時のことだった。
「そういえば、蒼。夏祭りの時の話、聞かせてよ」
「‥‥‥!」
美菜のその言葉で顔が真っ赤になったのが自分でも分かる。
電話で聞かれてもなんとなく話を逸らしていたのだ。
「私たちと別れた後、どこに行ってたの? 仲良く手繋いだりなんかしてさ」
「そ、それは‥‥‥」
このなんとも言い逃れできない状況で、どう説明すればいいのだろう。
言葉に詰まっているその時。
「あっ! もしかして陽向に告白された?」
「こ、告白⁉︎」
美菜のどストライクすぎる言葉に驚きを隠しきれず思わず大声で聞き返してしまった。
慌てて口元を手で押さえて、声のボリュームに気をつけつつ内心ハラハラドキドキしながらも弁解する。
「そ、そんなのされてないよ。あれは、はぐれないようにただ手を繋いでいただけでなんにもないから」
そう伝えると、「本当になにもないの?」となぜか美菜は少し残念そうな顔をして尋ねてくる。
「うん。なにもなかったよ」
そう言いながらも、ふと夏祭りの時、陽向が言った言葉が脳裏によぎった。
ーー『それは、俺にとって蒼は大事な人だからだよ』
その言葉が告白に入るのかは定かではない。
でも、私にとっても陽向は大事な人だと言える。
それは、友達といっても恋愛の面で言っても私には陽向が必要不可欠な存在だということは確かだ。