桜の花びらが降る頃、きみに恋をする

私たちは、お互い事故で大切な人を失っているから、その心の痛みを知っている。

だから、陽向は私に優しくしてくれた。

ただそれだけ。

それだけなのに、なんで涙が止まらないの?

学校では、なんとか平常心を保っているけれど、家に帰ると1人‥‥‥。

寂しさと苦しさで、胸がぎゅーと締め付けられる。

こんな時、陽向が傍にいてくれたらいいのに‥‥‥。

どんなに願っても、もうきみの心には届かない。

以前、陽向が買ってくれたヘアピンは、小さな箱に入れて引き出しの奥にしまった。

けれど、スマホにはまだ残っている陽向の写真。

猫カフェで隠し撮りした写真に、4人ではしゃいだ夏祭りの写真など。

写真を消すことは簡単なのに、なかなか消せずにいる。

この胸の中にある想いも。

全部、簡単に消せたらどれほど楽になれるのかな‥‥‥?
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